抄録
われわれの施設では,最近,舌扁平上皮癌で2例の外側咽頭後リンパ節転移がみられた。1例は過去に同側の舌癌で局所切除を受けていた34歳の女性で,舌の疼痛を生じて来院した。口腔内診査ではT2N0舌扁平上皮癌が示唆された。舌部分切除が施行された。術後のCTで頸部リンパ節転移がみられたため機能的頸部郭清術が施行された。しかしながら,1か月後にCTで転移性の咽頭後リンパ節が認められた。もう1例は80歳の女性で,舌の接触痛を生じて来院した。初診時の診査ではT4a舌扁平上皮が示唆された。CTでは両側性の頸部リンパ節転移がみられ,T4aN2cM0舌癌の診断となったが,さらに転移性の咽頭後リンパ節が認められた。これら自験例2症例と本邦で報告されている外側咽頭後リンパ節転移を生じた舌癌7例を検討した。TN分類の内訳は次の通りであった:T1;2例,T2;1例,rT2;1例,T3;2例,T4;2例,不明;1例,N0;5例,N1;1例,N2c;2例,不明;1例。全例で外側咽頭後リンパ節転移は頸部転移と同側にみられた。外側咽頭後リンパ節転移の殆どは原発巣の治療後の1年以内に生じていた。外側咽頭後リンパ節転移は外科的治療がなされた場合のみに制御されていた。よって,舌癌の患者においても,外科的切除や遠隔転移の予防が不可能となりかねない節外浸潤が起こる前に外側咽頭後リンパ節転移の早期発見のための画像診断に関心を寄せるべきである。