抄録
Forestier病は,脊椎の前縦靭帯骨化と肥厚を起こし脊椎強直をきたす疾患である。このため,Forestier病が頸椎に生じた場合には,気道管理の困難や嚥下障害が起こることが危惧される。
今回,われわれはForestier病を伴う舌扁平上皮癌患者の1例を報告する。患者は69歳男性。右舌縁部の有痛性腫瘤形成にて2008年3月中旬当センターを受診した。口腔内所見では,右舌縁部に 22×18×10mmの肉芽腫様腫瘤を認めた。CT検査では頸椎の骨過形成を認め,それによる気管の偏位と気道の狭窄を認めた。同年4月中旬,全身麻酔下に舌部分切除術を施行した。手術に先立って,舌切除後の気道閉塞や誤嚥を考慮して気管切開を行った。術後経過は良好で誤嚥を認めていない。術後48か月が経過したが,Forestier病の進行による嚥下障害の出現や舌癌の再発,転移は認めていない。