日本口腔腫瘍学会誌
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症例報告
NECO95Jプロトコールに準じた治療を行い良好な経過が得られた高悪性度上顎骨肉腫の1例
長汐 沙千穂鎌田 孝広栗田 浩能崎 晋一
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2017 年 29 巻 2 号 p. 37-44

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抄録

顎骨に生じる骨肉腫はいまだに治療法が定まっていない。骨肉腫の新補助化学療法治療プロトコール(NECO95J)は日本で開発され,評価された治療プロトコールでその有効性はすでに報告されている。今回われわれは,NECO95Jプロトコールに準じて治療を行った組織学的に高悪性の上顎骨肉腫の1例について報告する。
52歳の男性が左側硬口蓋の腫れと痛みの治療を求めてわれわれの病院を訪れた。左側硬口蓋に比較的境界明瞭,弾性硬の腫脹(46×37mm)を認めた。CT画像所見では左側硬口蓋から左側上顎洞にかけて,境界不明瞭で不定形の病変を認めた。生検を行った結果,病理学的診断は軟骨形成型の高悪性度骨肉腫であった。
治療は化学療法併用の集学的治療プロトコール(NECO95J)に準じて行った。術前に大量メトトレキセート, シスプラチン, ドキソルビシンからなる導入化学療法を行った。本症例では導入療法の効果がないと評価され,腫瘍の切除手術後には大量イフォマイド(IFO)による化学療法を加えた。
いくつかの有害事象がみられたが,計画した化学療法を最後の2クールのIFOを除いてほぼ施行することができた。
初診より6年経過した現在も再発および転移なく良好に経過している。

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© 2017 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
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