日本口腔腫瘍学会誌
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症例報告
軟口蓋に発生した基底細胞腺癌の1例
武富 孝治轟 圭太中村 守厳安陪 由思古場 朗洋楠川 仁悟
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2017 年 29 巻 2 号 p. 53-58

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抄録
基底細胞腺癌(BCAC)は,唾液腺悪性腫瘍の約2%を占め,そのうち9割以上は耳下腺をはじめとする大唾液腺に発生するといわれており,小唾液腺に発生することは極めてまれである。今回,われわれは軟口蓋に発生したBCACの1例を経験したので,その概要に文献的考察を加えて報告する。
患者は65歳,女性。初診時,左側軟口蓋に大きさ12×10mm,弾性やや硬の腫瘤を認めた。全身麻酔下にて腫瘍切除術を施行。腫瘍は球形,弾性やや硬で薄い被膜に包まれており,割を入れると内部は充実性であった。術中迅速病理組織学検査の結果,Monomorphic adenomaが疑われた。切除標本の病理組織学的所見は,線維性被膜に被包された腫瘍で,胞巣状・乳頭状に増殖する基底細胞様細胞からなり,胞巣の辺縁には部分的に柵状配列を認めた。また,腫瘍細胞の核は類円形で核異型は軽度であったが,腫瘍被膜への浸潤や脈管侵襲を認めた。さらに強拡大10視野中4個の核分裂像を認め,Ki-67 LI>10%であった。以上の結果から,最終的にBCACの病理組織学的診断を得た。現在,局所再発や頸部転移は認めず,経過良好である。
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© 2017 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
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