日本口腔腫瘍学会誌
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症例報告
頸部郭清術後に生じた両側乳糜胸の1例
大山 厳雄長谷川 和樹宮本 日出雄山口 聰
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2017 年 29 巻 2 号 p. 59-63

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抄録

頸部郭清術後に生じる合併症のうち乳糜胸は非常にまれである。今回われわれは左側頸部郭清術後に両側乳糜胸が生じた1例を経験したので報告する。患者は54歳男性で,下顎歯肉の痛みを主訴に200X年1月28日に近医歯科より紹介にて当科を受診した。左側口底癌(扁平上皮癌,T4N0M0)の診断のもとに術前治療として,放射線療法と化学療法を行い,左側下顎辺縁切除術,左側舌・口底腫瘍切除術,左側根治的頸部郭清術,右側肩甲舌骨筋上頸部郭清術,遊離腹直筋皮弁再建術,気管切開術を施行した。術後3日目に動脈血酸素飽和度が低下したため,胸部X線を撮影したところ両側の胸水の貯留を認めた。当院呼吸器外科に対診し左側胸腔ドレナージを施行した。胸腔からの廃液は乳黄色を呈しており生化学検査の結果,両側乳糜胸の診断を得た。術後6日目に右側の胸水の貯留が増加し,右側胸腔ドレナージを施行した。絶食,中心静脈栄養および両側胸腔持続ドレナージによる保存的療法を行うことによって胸水は減少し,術後21日目に胸腔ドレーンを抜去し,術後22日目に低脂肪食による経口摂取が開始された。術後5年以上経過し乳糜の再発は認められない。

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© 2017 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
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