抄録
放射線治療は,放射線を外部から照射する外照射と,放射性物質を含む小線源を腫瘍に埋め込み,腫瘍内部から照射する小線源治療に大別される。近年,高精度放射線治療といわれる外照射法が著しく進歩し,腫瘍の線量集中性が大きく高まったことで,治療成績も向上してきた。実際,咽頭がんの根治的治療では,強度変調放射線治療(IMRT)が導入されて耳下腺の線量を大きく低減することが可能となり,今や化学放射線療法が主体になりつつある。しかしながら,口腔がんを対象とする場合,標的となる腫瘍が顎骨に取り囲まれている解剖学的状況と,同じ扁平上皮癌でありながら咽頭がんより放射線抵抗性であるという問題から,外照射による根治は極めて難しいのが現状である。そうした中で,初期口腔がんの根治目的で実施されているのが小線源治療である。これには高線量率と低線量率の照射法があるが,本稿では,後者についてその現状と今後,そして低線量率連続照射による放射線生物学的優位性について概説する。