日本口腔腫瘍学会誌
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30 巻, 3 号
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第36回日本口腔腫瘍学会総会・学術大会
シンポジウム1「周術期口腔機能管理(がん口腔支持療法)のこれから」
  • 髙木 律男
    2018 年 30 巻 3 号 p. 79
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/24
    ジャーナル フリー
  • —都道府県がん診療連携拠点病院 がん専門病院歯科の立場から—
    秦 浩信, 今待 賢治, 新山 宗, 林 信, 上田 倫弘
    2018 年 30 巻 3 号 p. 80-84
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/24
    ジャーナル フリー
    独立行政法人国立病院機構に属する北海道がんセンターは北海道の都道府県がん診療連携拠点病院(以下 都道府県がん拠点病院)に指定されており全道各地よりがん患者が治療に訪れる。がん治療中の口腔内のトラブルに迅速かつ適切に対応することを目的として2012年に歯科口腔外科は開設され,2016年からは常勤体制となった。同年からは新たに口腔腫瘍外科も加わり,口腔癌診療を精力的に行っている。大学病院を除く都道府県がん拠点病院において,口腔がん治療と周術期口腔機能管理(がん支持療法)が分業できている施設は他になく,当院の特徴である。
    質の高い周術期口腔機能管理を実践するためには,病院内の他職種と連携が必須である。また,周術期口腔機能管理の継続性を担保するためには地域歯科医院との病診連携も重要になってくる。本稿では都道府県がん拠点病院の歯科としての役割をがん専門病院の立場から述べるとともに,当院で行っている医科歯科連携システムについて紹介する。
  • —都道府県がん診療連携拠点病院 大学病院(教育機関)歯科の立場から—
    曽我 賢彦
    2018 年 30 巻 3 号 p. 85-97
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/24
    ジャーナル フリー
    厚生労働省は,県内のがん診療の連携協力体制の整備やがんに関する相談支援情報の提供にあたって中心的な役割を果たす都道府県がん診療連携拠点病院を指定している。大学病院がこの指定を受けている場合,医育機関という本来の役割から,多職種連携でがん支持療法を担う人材育成という役割も果たす必要がある。
    岡山大学病院は2011年に,がんの支持療法を歯科の専門性をもって行うことを一つの目的とした専門診療部(医療支援歯科治療部)を開設した。そして,多くのがん手術療法,放射線療法,化学療法などにおいて,がん口腔支持療法を積極的に展開している。
    この治療部は,学部教育あるいは歯科医師臨床研修においてがん口腔支持療法の担い手を養成する絶好の場となり得る。そこで,2012年度から,研修歯科医が多職種連携医療の中における歯科医師の役割について学び,実践するための研修プログラムを開始した。本院で展開される様々な多職種連携医療に研修歯科医師をその一員として可能な範囲で参画させている。さらに,歯学部6年次生を対象に,診療参加型臨床実習でも1週間の実習期間を必修とした。
    がん口腔支持療法の分野は医療に必須な分野として引き続き発展が必要である。技術的な面のさらなる研鑽は言うに及ばず,全身的な医科的な知識の習得,がんを抱える患者を心理面でサポートできる能力,他職種との人間関係の構築能力,そして患者の死生観に至るような哲学的な理解も必要とされる。このことは,がん医療のみならず,本邦が課題とする健康長寿社会の実現に貢献する歯科医療人に共通して必要な素養である。歯科医療の幅を広げる若手歯科医師の育成が必要である。
  • —県指定がん診療連携拠点病院(地域中核病院)歯科の立場から—
    東森 秀年, 米田 進吾, 新土井 宣晶, 横山 真樹, 冨本 麻美, 寺本 雪乃, 堀 琴美, 神開 知子, 隅谷 敬子, 岩本 昌子, ...
    2018 年 30 巻 3 号 p. 98-105
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/24
    ジャーナル フリー
    周術期口腔機能管理が平成24年に保険導入され全国で取り組まれるようになったが,一部の歯科診療所を除きその多くが病院歯科にとどまり,いまだ十分とは言えない。
    地域で幅広く行うには,がん診療病院と歯科診療所の連携体制を確立することが重要である。また,退院後も口腔管理を継続していくことが大切で,特に質の高い口腔管理を行うためには,歯科衛生士間の連携も重要である。
    今後は,がん患者にとどまらず,全ての地域住民の健康福祉に大きく貢献できるようこれからの施策を考えていく必要がある。
シンポジウム3「口腔がん治療における放射線治療の現状と今後」
  • 三浦 雅彦
    2018 年 30 巻 3 号 p. 107
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/24
    ジャーナル フリー
  • 伊川 裕明, 小藤 昌志
    2018 年 30 巻 3 号 p. 108-115
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/24
    ジャーナル フリー
    重粒子線は通常の放射線(X線)と比較して高い殺細胞効果と優れた線量集中性を持つ。そのため,多くの臓器が密に存在し複雑な構造を呈する頭頸部領域の,特にX線抵抗性の非扁平上皮癌に対して効果が期待される。今回は口腔がんの重粒子線治療について報告する。
    放射線医学総合研究所病院では1997年4月から2016年3月に77症例の口腔がんに対して重粒子線治療が施行された。病理組織型は,唾液腺癌43例,悪性黒色腫29例,その他5例であった。経過観察期間中央値は48か月。全症例の5年局所制御率,無増悪生存率および全生存率は79.4%,34.6%および57.4%であった。晩期の有害事象としてgrade 3の放射線性顎骨壊死が11例に出現したが,すべての症例で腐骨除去術や義歯の使用によって摂食嚥下機能は保たれた。
    また,国内の重粒子線治療施設4施設で行われた多施設共同後向き観察研究では,2003年11月から2014年12月までに治療された83症例の口腔がんが登録された。病理組織型は唾液腺癌が46例,悪性黒色腫27例,その他10例であった。経過観察期間中央値は30か月。全例の3年局所制御率,無増悪生存率および全生存率は81.0%,59.8%および73.3%であり,多施設研究でも良好な治療成績が確認された。晩期有害事象としてgrade 3以上の症例を16例で認めた。
    重粒子線治療は口腔がんの局所進行症例,特に非扁平上皮癌などX線抵抗性腫瘍に対して有効な治療選択肢である(2018年4月から口腔の非扁平上皮癌に対して重粒子線治療は保険適用となった)。
    また,口腔がんの重粒子線治療において治療前の口腔内金属の除去,治療中の周術期管理,治療後の口腔内有害事象の対応だけでなく有害事象低減を目指したスペーサの作成や治療計画への参画など歯科医師の果たす役割は大きい。
  • 柿本 直也, 村上 秀明, 清水谷 公成
    2018 年 30 巻 3 号 p. 116-122
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/24
    ジャーナル フリー
    口腔癌,特に舌癌に対する組織内照射はその優れた治療成績と機能温存の点から,根治的治療の一つとして挙げられる。これまで,低線量率組織内照射が中心として用いられてきたが,医療従事者の被曝や線源供給などに問題があった。高線量率組織内照射はこれらの問題を解決することが可能である。今回われわれは,口腔癌に対する高線量率組織内照射の利点,舌癌に対する高線量率組織内照射の治療方法,舌癌に対する高線量率組織内照射の治療成績,高線量率組織内照射におけるCTを用いた画像誘導小線源治療対応鉛入りスペーサについて報告する。
  • 三浦 雅彦
    2018 年 30 巻 3 号 p. 123-128
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/24
    ジャーナル フリー
    放射線治療は,放射線を外部から照射する外照射と,放射性物質を含む小線源を腫瘍に埋め込み,腫瘍内部から照射する小線源治療に大別される。近年,高精度放射線治療といわれる外照射法が著しく進歩し,腫瘍の線量集中性が大きく高まったことで,治療成績も向上してきた。実際,咽頭がんの根治的治療では,強度変調放射線治療(IMRT)が導入されて耳下腺の線量を大きく低減することが可能となり,今や化学放射線療法が主体になりつつある。しかしながら,口腔がんを対象とする場合,標的となる腫瘍が顎骨に取り囲まれている解剖学的状況と,同じ扁平上皮癌でありながら咽頭がんより放射線抵抗性であるという問題から,外照射による根治は極めて難しいのが現状である。そうした中で,初期口腔がんの根治目的で実施されているのが小線源治療である。これには高線量率と低線量率の照射法があるが,本稿では,後者についてその現状と今後,そして低線量率連続照射による放射線生物学的優位性について概説する。
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