抄録
切除不能な下顎歯肉癌頸部リンパ節転移に対してのセツキシマブ併用FP療法中に発症した肺血栓塞栓症の1例を経験した。
患者は57歳男性。左側下顎部の疼痛を主訴に当科を受診した。画像検査で内頸動脈を広範囲に取り巻くリンパ節転移があり,切除不能例と診断し,セツキシマブ併用FP療法中を施行した。
途中,一過性の見当識障害および極軽度の呼吸苦があり,造影CTで肺動脈に複数個の微小血栓を認めた。ただちに化学療法を中止し,抗血栓療法を開始した。開始後,3週間で血栓の消失を確認したため,根治手術を施行した。術後4年9か月経過し,腫瘍の再発なく,また血栓の再形成もなく経過良好である。