日本口腔腫瘍学会誌
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症例報告
手術後にリウマチ性多発筋痛症を発症し治療に難渋した口底癌の治療経験
榎木 祐一郎浅野 悠勅使河原 大輔島田 祐樹塘田 健人去川 俊二蝦原 康宏中平 光彦菅澤 正
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2022 年 34 巻 1 号 p. 7-14

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抄録

リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica:PMR)は悪性腫瘍との関連性のある原因不明の慢性炎症疾患である。われわれは,口底癌の手術後に肩関節の疼痛と慢性炎症反応を認め,PMRを発症した症例を経験したので報告する。症例は,81歳女性で口底の潰瘍を主訴に当科受診した。口底癌SCC cT4aN0M0の診断で,口底部悪性腫瘍切除術,肩甲骨皮弁再建術を施行した。手術後,頻回なる発熱と持続的なC反応性蛋白(CRP)が高値の炎症反応を認めたが,明らかな感染巣はなかった。手術後69日目に白血球数は7,990/μl,CRPは20.724mg/dlと強い肩関節痛を認めたため,自己免疫疾患の可能性を考えて精査した。自己免疫抗体は陰性で,赤沈は103mm/hと亢進し,PMRの診断基準を満たし,PMRと診断した。プレドニゾロン(PSL)15mg/dayを開始し,疼痛は著明に改善した。現在PSLは8mg/dayにて,再燃なく経過は良好である。PMRは,周術期の侵襲や誤嚥性肺炎と症状が類似するため診断に苦慮するが,早期診断と治療で著明に改善が得られる疾患であり,併発する可能性を留意しておく必要がある。

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© 2022 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
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