抄録
今回われわれは,下顎区域切除術後の再建プレート破折に対し,再建プレート破折前の顎位を術中に再現するレジンフレームを用いた新たなプレート置換術を考案し,良好な結果を得たため,その概要を報告する。患者は89歳の男性で左側下顎歯肉癌に対し下顎区域切除術,頸部郭清術,プレート大胸筋皮弁再建術を施行した後,術後2年8か月で再建プレートの破折を認めた。破折前のCT画像をもとに作製した実物大臓器立体モデル(以下3Dモデル)を用いて作製したレジンフレームにワイヤー保持溝,スクリュー孔を付与しプレート破折前の下顎骨の位置関係を記録したレジンフレームを作製した。手術は破折プレートを露出した後,レジンフレームと破折したプレートをワイヤーにて結紮することで偏位した下顎骨の整復を行った。その後,レジンフレームを下顎骨にスクリュー固定し,下顎の位置を固定した。破折したプレートを除去した後,プレベンディングしておいた再建プレートを固定した。従来の術式では術中に下顎骨の位置関係を正確に復位することは困難であったが,自験例では過去のCTデータから3Dモデルを作製し,レジンフレームにて位置関係を記録することにより良好な顎位の再現が可能であった。自験例のような残存歯が少なく,術中顎間固定の出来ない症例では本法が有用であると考えられた。