抄録
多形腺腫由来癌は主に耳下腺などの大唾液腺に生じ,その癌腫成分は腺癌(NOS)や唾液腺導管癌が多い。今回われわれは,頰部の小唾液腺由来の筋上皮癌を主体とする多形腺腫由来癌の1例を経験したので報告する。症例は74歳,女性で,左側頰部の腫脹を主訴に受診した。MRIでは左側咬筋前縁を取り囲む分葉状の腫瘤性病変を認めた。生検では,多形腺腫と癌腫成分が混在した所見を認め,多形腺腫由来癌の診断を得た。全身麻酔下に腫瘍切除術,肩甲舌骨筋上頸部郭清術,血管柄付き前外側大腿皮弁移植による再建術を実施した。術後経過は良好であったが,術後約5か月経過時に他病死の転帰となった。多形腺腫由来癌は小唾液腺ではまれな疾患であり,多施設からの症例の蓄積による術前診断法および治療法の確立が望まれる。