孔道癌(Carcinoma cuniculatum)は,病理組織学的にはウサギの巣穴のような洞穴状の浸潤を示す扁平上皮癌の一亜型である。今回,下顎歯肉に生じた本疾患の1例を経験したので報告する。
患者は慢性骨髄性白血病の既往を有する65歳の男性で,下顎歯肉の白斑を主訴に受診した。左側下顎歯槽部頰側に白色病変が認められ,急速に舌側へ進展した。画像所見では扁平な腫瘍像が認められた。悪性病変を疑って生検を行ったが,悪性の診断には至らなかった。病変の増大が比較的早かったため,悪性病変に準じた切除を予定し,初診後1か月で下顎辺縁切除術を施行した。病理組織学的診断は孔道癌だった。術後4年で再発や転移はない。
孔道癌は口腔扁平上皮癌の中でまれな組織型で,病理組織学的診断の困難さに加え認知度も低く,報告が少ない。さらなる臨床的,病理組織学的分析には,症例の蓄積が必要であることから,1典型例として報告した。
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