抄録
S-1は5-FUのプロドラックであるテガフールに,ギメラシルとオテラシルカリウムを配合した経口抗癌剤である。その抗腫瘍効果は標的酵素であるthymidylate synthase (TS),分解系の律速酵素のdihydropryimidine dehydrogenase (DPD),代謝酵素orotate phosphoribosyl transferase (OPRT)の関与が示唆されている。今回,70歳以上の高齢口腔扁平上皮癌7症例を対象に,投与方法,実投与量,有害事象,抗腫瘍効果,および生検標本からTS,DPD,OPRTの発現について検討した。結果,CR 3例,PR 1例,SD 3例であった。投与方法は,6例で最終的に2週投与1週休薬し,5例で推奨投与量の67%〜80%の低用量で行い,6症例に有害事象を生じていた。細胞質でのTS低発現症例は,S-1の効果が示される傾向があった。本検討から,高齢者口腔扁平上皮癌患者に対して,S-1を2週間投与後1週間休薬する低用量療法は,有効かつ安全であることが示唆された。さらに,S-1療法の選択には,免疫組織化学的手法による細胞質でのTS発現が一助になる可能性が示唆された。