日本口腔腫瘍学会誌
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症例報告
再発後に顕在化し,急速な転帰を辿ったG-CSF産生舌癌と考えられた1例
原口 和也高橋 理矢田 直美笹栗 正明古田 功彦吉岡 泉土生 学
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2025 年 37 巻 1 号 p. 21-30

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抄録
悪性腫瘍はまれに顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte-colony stimulating factor,以下G-CSF)産生による白血球増多を呈することが知られているが,口腔におけるG-CSF産生腫瘍の報告は少ない。今回われわれは急激な転帰を辿り,再発後に顕在化したG-CSF産生舌癌と考えられた症例を経験したので報告する。症例は83歳,女性で左側舌縁部の腫瘤を主訴に受診した。各種検査にて病変は舌扁平上皮癌であり,初診から1か月後に左側舌部分切除術を施行した。術後経過観察を行っていたところ,術後4か月で撮影した造影CTにて左中内深頸領域にリンパ節転移所見を認めたため左全頸部郭清術を施行した。切除標本の術後病理組織検査にて被膜内浸潤した転移リンパ節を1個認めた。しかしながら頸部郭清術から6か月後,左頸部に再発を認め,頸動脈周囲および頸部皮膚への浸潤を認めた。外科的切除適応外と判断し,化学放射線療法を計画するも急激に病勢が進行し,当科初診から13か月で死亡した。血液検査において,白血球数は頸部再発までは正常範囲内であったが,頸部再発後は16,000~25,000/μlと高値を認めた。また,抗G-CSFモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色では,生検標本,原発切除標本および転移リンパ節標本すべてで陽性所見を示した。以上より本腫瘍は頸部再発後に顕在化したG-CSF産生腫瘍の可能性が高いと診断した。
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© 2025 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
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