抄録
World Health Organization(WHO)の腫瘍分類は,世界中で診断業務を標準化するための不可欠なツールであり,そのためのガイドブックであることは周知の事実である。本稿では,WHO頭頸部腫瘍分類改訂(第5版)における口腔領域の上皮性腫瘍の中で,表在性病変に関連する口腔潜在的悪性疾患と口腔上皮性異形成について改訂点を概説する。口腔潜在的悪性疾患については,2017年のWHO頭頸部腫瘍分類第4版において初めて記載され,従前の前癌状態と前癌病変を統合させる概念となった。今回の改訂では,3つの疾患が削除され,1つは新規に加えられた家族性癌症候群の中に組み込まれた。その他に,新たに3つの疾患,増殖性疣状白板症,口腔苔癬様病変,口腔移植片対宿主病が追加された。口腔上皮性異形成は主に口腔潜在的悪性疾患でみられ,扁平上皮癌への進展リスクを伴う病変であると定義されている。そして,口腔上皮性異形成のグレード分類が口腔潜在的悪性疾患の病理組織学的な評価ツールになっている。一方で,口腔上皮性異形成の取り扱いについては,矛盾が生じた内容と受け取られる改訂となっていることから,その問題点と口腔表在癌ワーキンググループの口腔上皮性異形成に対する考え方について概説する。