日本口腔腫瘍学会誌
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症例報告
口腔癌の頸部郭清術検体内に甲状腺乳頭癌リンパ節転移が発見された3症例
奥井 太郎相澤 貴子水谷 英樹
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2025 年 37 巻 2 号 p. 53-64

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抄録
甲状腺乳頭癌と口腔癌の重複癌では,両者は共通する所属リンパ節を持つため,術前の段階でどちらのリンパ節転移であるかの判断が困難な場合がある。また,口腔癌に対する郭清された頸部リンパ節検体から甲状腺癌の転移が発見された場合の対応も問題となる。今回われわれは口腔癌に対して頸部郭清術を行い,病理組織検査で甲状腺乳頭癌のリンパ節転移が発見された3症例を経験した。
[症例1]61歳女性,右側舌扁平上皮癌cT4aN2cM0に対し舌亜全摘術,両側全頸部郭清術変法,遊離腹直筋皮弁再建術を行った。扁平上皮癌の頸部リンパ節転移は認められなかったが,甲状腺乳頭癌の転移リンパ節を5個認めた。
[症例2]79歳女性,右側下顎歯肉扁平上皮癌cT4aN0M0に対し右側下顎区域切除術,右側全頸部郭清術変法,有茎広背筋皮弁/チタンプレートによる再建術を行った。扁平上皮癌の転移リンパ節1個,甲状腺乳頭癌の転移リンパ節1個を認めた。
[症例3]61歳女性,右側下唇粘表皮癌術後頸部リンパ節後発転移に対し右側全頸部郭清術変法を行った。粘表皮癌の転移リンパ節1個と甲状腺乳頭癌の転移リンパ節1個を認めた。
口腔癌の画像検索で甲状腺乳頭癌を疑う所見を認めた場合には,甲状腺やリンパ節に対する穿刺吸引細胞診を含めた組織診を行う意義が示唆された。
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© 2025 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
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