日本口腔腫瘍学会誌
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37 巻, 2 号
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総説
  • 中野 敬介, 長塚 仁
    2025 年37 巻2 号 p. 31-39
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/03
    ジャーナル フリー
    WHO頭頸部腫瘍分類(以下,WHO分類)第5版は2022年にonlineで公開された。WHO分類第5版では口腔潜在的悪性疾患(以下,OPMDs)の疾患リストが変更され,新しく掲載されたHPV関連口腔上皮性異形成は,従来の口腔上皮性異形成(以下,OED)とは別の疾患として分類されている。WHO分類第5版ではOEDの組織学的分類は3分類法が維持されているが,2分類法についても言及されている。また,OEDにみられる構造学的および細胞学的特徴について,細胞の増殖能,分化等の観点を考慮した組織学的特徴が追加されている。扁平上皮癌は,WHO分類第4版では「口腔ならびに舌可動域における腫瘍」の章の冒頭に記載されていたが,WHO分類第5版では章末に記載されている。扁平上皮癌の亜型として扱われてきた疣状癌と孔道癌はその特徴的な臨床像,病理組織像および病態に基づいて,独立した項目として記載された。本報告では,WHO分類第5版における口腔上皮性腫瘍分類の変更点を概説する。
  • 柳下 寿郎, 明石 良彦, 莇生田 整治, 石川 文隆, 伊藤 由美, 猪俣 徹, 河内 洋, 佐藤 由紀子, 里見 貴史, 関川 翔一, ...
    2025 年37 巻2 号 p. 41-51
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/03
    ジャーナル フリー
    World Health Organization(WHO)の腫瘍分類は,世界中で診断業務を標準化するための不可欠なツールであり,そのためのガイドブックであることは周知の事実である。本稿では,WHO頭頸部腫瘍分類改訂(第5版)における口腔領域の上皮性腫瘍の中で,表在性病変に関連する口腔潜在的悪性疾患と口腔上皮性異形成について改訂点を概説する。口腔潜在的悪性疾患については,2017年のWHO頭頸部腫瘍分類第4版において初めて記載され,従前の前癌状態と前癌病変を統合させる概念となった。今回の改訂では,3つの疾患が削除され,1つは新規に加えられた家族性癌症候群の中に組み込まれた。その他に,新たに3つの疾患,増殖性疣状白板症,口腔苔癬様病変,口腔移植片対宿主病が追加された。口腔上皮性異形成は主に口腔潜在的悪性疾患でみられ,扁平上皮癌への進展リスクを伴う病変であると定義されている。そして,口腔上皮性異形成のグレード分類が口腔潜在的悪性疾患の病理組織学的な評価ツールになっている。一方で,口腔上皮性異形成の取り扱いについては,矛盾が生じた内容と受け取られる改訂となっていることから,その問題点と口腔表在癌ワーキンググループの口腔上皮性異形成に対する考え方について概説する。
症例報告
  • 奥井 太郎, 相澤 貴子, 水谷 英樹
    2025 年37 巻2 号 p. 53-64
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/03
    ジャーナル フリー
    甲状腺乳頭癌と口腔癌の重複癌では,両者は共通する所属リンパ節を持つため,術前の段階でどちらのリンパ節転移であるかの判断が困難な場合がある。また,口腔癌に対する郭清された頸部リンパ節検体から甲状腺癌の転移が発見された場合の対応も問題となる。今回われわれは口腔癌に対して頸部郭清術を行い,病理組織検査で甲状腺乳頭癌のリンパ節転移が発見された3症例を経験した。
    [症例1]61歳女性,右側舌扁平上皮癌cT4aN2cM0に対し舌亜全摘術,両側全頸部郭清術変法,遊離腹直筋皮弁再建術を行った。扁平上皮癌の頸部リンパ節転移は認められなかったが,甲状腺乳頭癌の転移リンパ節を5個認めた。
    [症例2]79歳女性,右側下顎歯肉扁平上皮癌cT4aN0M0に対し右側下顎区域切除術,右側全頸部郭清術変法,有茎広背筋皮弁/チタンプレートによる再建術を行った。扁平上皮癌の転移リンパ節1個,甲状腺乳頭癌の転移リンパ節1個を認めた。
    [症例3]61歳女性,右側下唇粘表皮癌術後頸部リンパ節後発転移に対し右側全頸部郭清術変法を行った。粘表皮癌の転移リンパ節1個と甲状腺乳頭癌の転移リンパ節1個を認めた。
    口腔癌の画像検索で甲状腺乳頭癌を疑う所見を認めた場合には,甲状腺やリンパ節に対する穿刺吸引細胞診を含めた組織診を行う意義が示唆された。
  • 濱田 裕嗣, 中西 康大, 高橋 美穂, 唐木田 一成, 大澤 孝行, 太田 嘉英, 近藤 裕介
    2025 年37 巻2 号 p. 65-71
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/03
    ジャーナル フリー
    類血管腫型線維性組織球腫(Angiomatoid fibrous histiocytoma : 以下AFH)は四肢に好発する中間悪性型軟部腫瘍であり,口腔内に発生するのは非常にまれである。今回われわれは下顎前歯部に発生し,診断に苦慮したAFHのmyxoid variant(粘液型亜型)の1例を経験したので報告する。症例は17歳,男性。右側下顎前歯部歯肉の腫脹を主訴として当科紹介受診した。右側下顎前歯部舌側歯肉に直径20mm,表面粘膜正常で弾性軟の境界明瞭な腫瘤を認めた。パノラマX線画像にて右側下顎側切歯,犬歯間に直径20mmの境界明瞭な骨透過像を認め,歯根吸収は認めなかった。CT画像にて右下2,3間の舌側皮質骨および歯槽突起の吸収を認めた。MR画像にてT1強調画像にて低信号を,T2強調画像で高信号を呈した。生検を行ったところ確定診断には至らず粘液型腫瘍(Myxoid tumor)の報告であった。その後,全麻下に腫瘍摘出術を施行しAFHの診断を得た。術後2年が経過するが,再発および転移は認めない。本腫瘍は,臨床所見,画像所見では他の腫瘍と鑑別が困難であり,また病理組織学的に多彩な組織像を呈することから生検から確定診断が得られるとは限らない。確定診断にはFISHが必要となる。本症例においても切除標本におけるFISHで確定診断に至った。
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