抄録
免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)は,再発・転移頭頸部癌に対する標準治療として使用されているが,従来の化学療法で起こる副作用とは異なる免疫学的有害事象(immune related Adverse Events:irAE)を来たすため,その管理が重要となっている。今回,われわれはPembrolizumab初回投与後にirAE脳炎を来たした上顎歯肉扁平上皮癌の1例を経験したので報告する。患者は84歳,女性。左側上顎歯肉扁平上皮癌(cT4aN1M0)に対し放射線照射70Gyを行い完全奏効となったが,放射線照射終了6か月後に局所再発を認めた。局所再発に対して手術を提案したが希望しなかったためPembrolizumab単独投与を開始した。初回投与の14日後に脱力,全身倦怠感が生じて緊急入院となった。神経系のirAEを疑い,脳神経内科に対診したところ筋炎,重症筋無力症,Guillain-Barre症候群などは否定的であった。緊急入院後11日目には意識障害も出現し髄液検査を施行したところ,細菌・ウイルスは陰性であったが単核球有意の細胞数の増加と蛋白の上昇を認めたため,頭部MRI検査を行ったが意識障害の原因と考えられるような異常所見は認めなかった。irAE脳炎と診断されステロイドパルス療法を行い意識障害は消失したが,自立歩行が可能になるまでは回復せずリハビリ目的での転院となり,その後自立歩行が可能になった。なお,1回のPembrolizumab投与にて腫瘍は著明に縮小し,退院時には消失していた。Pembrolizumab投与後1年9か月で局所再発を認めたが疼痛などの自覚症状は無くBest Supportive Careとなり,その5か月後に死亡した。