日本口腔腫瘍学会誌
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顎骨形態温存を計った比較的大きな下顎集合性歯牙腫の1例
原 巌松本 堅太郎若江 秀敏二宮 康郎井上 真樹冨岡 徳也谷口 邦久北村 勝也
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1998 年 10 巻 1 号 p. 28-33

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抄録

われわれは, 下顎臼歯部に発生した比較的大きな集合性歯牙腫を経験し, 口腔内より摘出し得た一例を経験したので報告する。
患者は, 14歳, 女性で左側下顎骨体部の腫脹を主訴として1996年9月19日精査目的で当科を受診した。口腔外所見としては, 左側下顎下縁部より頬部にかけてびまん性の腫脹を認め, 触診にて骨様硬の膨隆を認めた。口腔内所見としては, 左側第二小臼歯部より後方に歯牙は認められなかった。パノラマ所見にて, 近遠心的には左側下顎小臼歯部より下顎角まで, 上下的には歯槽頂部より下顎下縁部に至る多数の歯牙様不透過像が認められた。CT所見で, 左側下顎骨は, 頬舌的膨隆が著明に認められ, 歯牙様不透過像を多数認めた。
左側下顎骨内歯牙腫の診断のもと, 1996年10月17日腫瘍全摘出術を施行した。術式は, decortication and bone replacement法 (第II法) に準じて行った。術後経過良好にて1996年10月23日退院し, 外来通院とした。現在2週間ごとに経過観察を行っているが骨欠損部の骨形成が認められ, 再発は認められない。
腫瘤中の硬組織は, 大部分がエナメル質, 象牙質, セメント質の歯牙硬組織および歯髄様組織の不規則な増殖で構成されていた。また軟組織部では線維性組織が主体で, 歯原性上皮や小嚢胞様の空洞が介在している部分も認められた。病理組織学的には, 一部歯原性上皮なども認められたため, 再発などに注意し経過観察を行う予定である。

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