日本口腔腫瘍学会誌
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10 巻, 1 号
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  • ―浸潤癌周辺の上皮性異形成の様態を中心として―
    山本 哲也, 米田 和典, 植田 栄作, 尾崎 登喜雄
    1998 年 10 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    口腔粘膜扁平上皮癌T1症例35例を対象に臨床・病理組織学的検討を行い, 以下の結果を得た。1) 外科的安全域が1cm以上の症例では1例も再発はみられなかったのに対し, 1cm未満では25例中10例に再発が認められた。2) 浸潤癌の周辺の上皮における異形成の様態を3つのタイプに分類した。癌に隣接したごく一部の上皮に軽度の異形成が認められたタイプ1に比べ, 広範囲に高度な異形成が認められたタイプIIや, 多中心性に浸潤癌および異形成上皮が認められたタイプIIIでは局所再発が高率の傾向にあった。3) リンパ節転移は, 1例を除き, 他は後発転移であり, そのうちの3例は浸潤様式が3型であった。これらの結果よりT1症例では, 1cm以上の安全域で切除すること, 後発リンパ節転移が多く, 特に浸潤様式が3型のものでは後発転移に気をつけることが大切で, さらには多中心性の異形成上皮の存在は, 多中心性癌の発生を示唆しているように思われた。
  • 熊谷 茂宏, 川尻 秀一, 中村 博幸, 森山 万紀子, 山本 悦秀, 篠原 正徳
    1998 年 10 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    最近, 膜型マトリックスメタロプロテアーゼ (MT-MMP) がMMP-2 (ゼラチナーゼA) の活性化因子としてクローニングされ, さらにヒト肺癌および胃癌におけるこのMT-MMPの発現がMMP-2の活性化とよく相関していたことから, MT-MMPによるMMP-2の活性化が癌の浸潤や転移における一つの重要な鍵を握っている可能性が示唆されるようになった。そこで本研究では, ヒトロ腔扁平上皮癌におけるMT-MMPの発現と癌の浸潤・転移との関係を明らかにする目的で, 33例の口腔扁平上皮癌組織におけるMT1-MMP, MT3-MMPおよびMMP-2の免疫組織化学的発現と癌浸潤様式およびリンパ節転移との関係について検討を行った。その結果, MT1-MMP, MT3-MMPおよびMMP-2の陽性例はそれぞれ18例 (54.5%) , 18例 (54.5%) , 15例 (45.5%) に認められ, MMP-2陽性症例のほとんど (15例中14例) にMT1-MMPも同時に発現していた。浸潤様式が1型から4D型になるにつれて, MT1-MMP, MT3-MMPおよびMMP-2の陽性症例率は高くなる傾向を示し, びまん性に浸潤する4C・4D型では大部分 (9例中8例) がMT1-MMPとMMP-2を同時に発現していた。さらにリンパ節転移群においてもMT1-MMP, MT3-MMPおよびMMP-2の陽性症例率は高値を示した。以上の結果より, MT1-MMPとMT3-MMPはMMP-2と共に口腔扁平上皮癌の浸潤・転移の過程で重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
  • 米持 武美, 三沢 肇, 笹森 傑, 星 秀樹, 杉山 芳樹, 関山 三郎
    1998 年 10 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1975年4月から1995年3月までの20年間に, 岩手医科大学歯学部附属病院第二口腔外科を受診した15歳以下の小児のうち, 病理組織学的に確定診断を得た59例の顎口腔領域腫瘍について臨床的に検討を行った。腫瘍59例の内訳は, 良性腫瘍57/59例 (96.6%) , 悪性腫瘍2/59例 (3.4%) であった。良性腫瘍のうち軟組織腫瘍は13/57例 (22.8%) で血管腫が最も多く, 顎骨腫瘍は44/57例 (77.2%) で歯牙腫が最も多かった。発生部位は軟組織腫瘍では口唇, 舌, 頬粘膜に多く, 顎骨腫瘍では下顎に多くみられた。性差は認められなかった。顎骨腫瘍は6歳以上で増加傾向にあり, 特に歯原性腫瘍の頻度が高くなっていた。良性腫瘍57例は外科療法により全例経過良好であった。悪性腫瘍2例のうち軟骨肉腫は手術を行い経過良好であった。Ewing肉腫は三者併用療法を行うも腫瘍死の転帰をとった。
  • 佐野 和生, 関根 浄治, 成松 雄治, 釜崎 勢大, 長富 浩一郎, 道津 浩代, 岩本 宏明, 井口 次夫
    1998 年 10 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    超音波駆動メス (ハーモニック・スカルペル (HS) ) を口腔外科手術に応用した。周波数55, 500Hzによる機械的振動が切開と凝固を可能にする。HSを用いることによって血管結紮数を減らすことができ, 確実な止血も得られた。近い将来, HSは口腔外科手術に必要な手術器械として普及する可能性があると思われる。
  • 原 巌, 松本 堅太郎, 若江 秀敏, 二宮 康郎, 井上 真樹, 冨岡 徳也, 谷口 邦久, 北村 勝也
    1998 年 10 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    われわれは, 下顎臼歯部に発生した比較的大きな集合性歯牙腫を経験し, 口腔内より摘出し得た一例を経験したので報告する。
    患者は, 14歳, 女性で左側下顎骨体部の腫脹を主訴として1996年9月19日精査目的で当科を受診した。口腔外所見としては, 左側下顎下縁部より頬部にかけてびまん性の腫脹を認め, 触診にて骨様硬の膨隆を認めた。口腔内所見としては, 左側第二小臼歯部より後方に歯牙は認められなかった。パノラマ所見にて, 近遠心的には左側下顎小臼歯部より下顎角まで, 上下的には歯槽頂部より下顎下縁部に至る多数の歯牙様不透過像が認められた。CT所見で, 左側下顎骨は, 頬舌的膨隆が著明に認められ, 歯牙様不透過像を多数認めた。
    左側下顎骨内歯牙腫の診断のもと, 1996年10月17日腫瘍全摘出術を施行した。術式は, decortication and bone replacement法 (第II法) に準じて行った。術後経過良好にて1996年10月23日退院し, 外来通院とした。現在2週間ごとに経過観察を行っているが骨欠損部の骨形成が認められ, 再発は認められない。
    腫瘤中の硬組織は, 大部分がエナメル質, 象牙質, セメント質の歯牙硬組織および歯髄様組織の不規則な増殖で構成されていた。また軟組織部では線維性組織が主体で, 歯原性上皮や小嚢胞様の空洞が介在している部分も認められた。病理組織学的には, 一部歯原性上皮なども認められたため, 再発などに注意し経過観察を行う予定である。
  • ―症例報告ならびに文献的考察―
    秀 真理子, 長谷川 光晴, 大木 秀郎, 堀 稔, 松本 光彦, 田中 博, 佐藤 廣, 小宮山 一雄
    1998 年 10 巻 1 号 p. 34-42
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    患者は42歳女性。約3年前から両側耳下腺部が腫張し, その増大と口腔乾燥感の増強のため1993年7月当科を受診した。
    顔貌はび漫性に両側耳下腺部が腫脹し, 触診で, 左側では比較的境界明瞭な鶏卵大の弾力性やや硬の腫瘤1個, 右側では胡桃大の同様の腫瘤2個を触知した。各種臨床検査および画像所見でも腫瘤に対する診断を確定しえず, 耳下腺腫瘍の可能性も考慮して確定診断を得る目的で左側耳下腺浅葉切除術を施行した。2か月後右側耳下腺浅葉切除術を施行した。病理組織学的診断はいずれもBenign lymphoepithelial lesion (LEL) であった。
    術後約1年を経過し, 左側の耳下腺部に大豆大の腫瘤が出現し漸次増大傾向を示したため, 1995年2月生検を行いdiffuse medium sized cell lymphomaと診断された。その後駿河台日大病院内科へ転科し, CHOP療法を5クール, MEK-2療法4クールの化学療法を受け1997年まで経過観察中である。
    本症例は, Pan B cellマーカーであるCD20陽性で, TcellマーカーであるCD3は陰性を示したところから, 耳下腺のリンパ上皮性疾患を基盤として発生したMALT lymphomaと診断した。
  • 上原 雅隆, 吉田 眞一, 佐野 和生, 井口 次夫
    1998 年 10 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    われわれは, 右側上顎洞癌治療後6年目に, 反対側上顎洞に第二癌が発症した症例を経験した。第一癌, 第二癌共にいわゆる三者併用療法を施行したが, 第二癌はコントロールしきれず, 死の転帰をとった。
    癌治療後は, 長期にわたって緻密な経過観察が必要である。
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