抄録
根治手術後に即時再建手術を行った口底癌19症例の術後の構音機能と手術との関連性を分析した。評価方法は日本語100語音による発語明瞭度検査である。対象症例の内訳を軟組織の再建方法別にみると, 遊離前腕皮弁移植症例が12例, 大胸筋皮弁移植症例と腹直筋皮弁移植症例がそれぞれ3例, 前腕皮弁と大胸筋皮弁の併用症例が1例であった。舌の切除範囲別では, 舌部分切除症例が14例, 可動部半側切除症例が1例, 半側切除症例が1例, 亜全摘出症例が3例であった。これらの症例について原発腫瘍の大きさ, 切除範囲, 切除様式, 軟組織の再建方法, 下顎骨の再建方法と術後の構音機能の関連について検討した。その結果, 原発腫瘍の大きさによる術後の構音機能の差は少なかったが, 舌の切除範囲が大きくなると構音機能は低下していた。切除様式については側方型の切除を受けた症例の明瞭度は前方型の切除を受けた症例よりも明らかに高く, 切除様式による発音機能の差異が明らかであった。前方型の切除を行った症例の術後の発音障害を防ぐためには, 手術法の改善が必要であり補綴物の応用が有用であることが示唆された。