日本口腔腫瘍学会誌
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舌癌と甲状腺癌の重複癌の1例
岡部 孝一坂下 英明宮田 勝齋藤 貴一郎高木 純一郎車谷 宏
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1999 年 11 巻 3 号 p. 182-186

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抄録

今回われわれは, 舌扁平上皮癌患者の放射線治療後の経過観察中に発見された甲状腺癌の1例を経験したので, その概要を報告する。
患者は40歳の女性で, 1997年7月初旬頃より, 左舌側縁部疼痛を自覚するようになり, 1998年7月9日当科を受診した。顔貌の変形なく, 頸部リンパ節に有意なリンパ節は触知しなかった。左側舌下面に, 大きさ10×12mm, 境界不明瞭, 有痛性, 硬結を伴う, 潰瘍を認めた。舌生検を施行し, 舌扁平上皮癌 (T1N0M0) の病理診断を得た。放射線科にて電子線腔内照射12Gy×3回 (計36Gy) をおこない, 病変は完全に消失した。
以後, 経過観察していたが, 頸部リンパ節触診時に, 約1センチ程度の腫瘤を左甲状腺部に認めた。当院一般消化器外科にて甲状腺細胞診を行い, 乳頭癌の診断を得た。CTでは, 甲状腺左葉に直径1cm程度の腫瘍を認めたが, 周囲への浸潤は認められなかった。一般消化器外科にて, 10月13日, 全身麻酔下にて, 甲状腺左葉切除術および保存的頸部郭清術を施行した。病理診断は乳頭癌であった。口腔内および頸部ともに再発傾向は認めず, 経過は良好である。

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