日本口腔腫瘍学会誌
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前癌病変の病理
―特に上皮性異形成と初期癌について
立川 哲彦河野 葉子相田 忠輝薄井 智美小原 希生北條 正太郎前田 由紀子吉澤 美奈
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1999 年 11 巻 4 号 p. 364-371

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抄録

上皮性異形成, 初期癌, 初期浸潤癌の細胞特性を検索した。
1.細胞増殖関連マーカーでは上皮性異形成が増強するに従い, その発現は強く見られるが, 初期癌と比較し, 有意差を認めなかった。
2.細胞機能関連マーカーでは上皮性異形成が増強するに従い, その発現も増強し, 初期癌と比較し, 有意差を認めなかった。
3.細胞浸潤マーカーであるマトリックスメタロプロテアーゼ (MMP) は高度上皮性異形成では有意な発現の増加を認めた。加えて, 上皮下結合織にもMMPの発現を認めた。初期癌では高度上皮性異形成と同様な所見を認めた。
4.以上のことから, 高度上皮性異形成は発癌過程の中ではすでにイニシエーションが終了した時期と考えられ, MMPの発現をみてもプロモーションが始まり, 結合織に浸潤を開始する初期の段階であることが示唆された。

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