口腔扁平上皮癌について, 病理組織学的所見と臨床像との相関, ヒトパピローマウイルス (HPV) , p53, EIAF発現などを検索した。
HPVについては, 臨床的に口腔粘膜に異常を認めなかった56例の擦過材料よりDNAを抽出し, ユニバーサルプライマーを用いたPCRで良性型 (HPV6, 11) , 悪性型 (HPV16, 18, 31, 33, 52b, 58) を増幅し, 増幅産物の制限酵素による切断パターンによるタイピングを行った。正常粘膜上皮では, HPV6型1例, HPV16型1例が検出された。
77例の口腔扁平上皮癌について, HPV-16, -18, -33型に対する型特異的プライマーを用いてPCRによる増幅を行い, Dot blot hybridizationによりその型を同定した。HPV DNAは77例中22例 (28.6%) に検出され, HPV16型が23例, HPV16, 18型混合が1例に認められた。
p53変異の有無を38例の口腔扁平上皮癌についてSSCP法とdirect sequencingにより検索し, p53の変異は9例 (24%) に認められた。酵母を用いたp53のファンクショナルアッセイによる検索では, 口腔扁平上皮癌の約80%にp53の変異が生じていることが明らかになった。
EIAF (ets-oncogene familyに属する転写因子) が細胞外基質 (ECM) の分解酵素であるマトリックスメタロプロテナーゼ (MMP) -1, -3, -9の転写を亢進させる。口腔扁平上皮癌27例を用いて, EIAFの発現をSouthern blotting, in situ hybridizationを行い検索した。15例 (55%) の腫瘍細胞にEIAFの発現が認められた。EIAFmRNAは浸潤癌17例中14例にみられ, EIAF非発現例では膨張型発育様式を示した。EIAF発現細胞はリンパ節転移例で増加した。EIAFは癌細胞の浸潤能を亢進することにより悪性度に関与していた。
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