抄録
扁平上皮癌はお互いに類似性をもっているが, 相違する所見が分化度によって様々である。口腔扁平上皮癌の悪性度による超微構造は多くの研究者により報告されている。超微構造に関する研究では高分化型扁平上皮癌と低分化型扁平上皮癌との間に明確な相違があることが報告されている。
発癌を含む増殖障害は細胞増殖の増加率としばしば関係している。過去20ないし30年にわたり, ヒト悪性腫瘍の組織学的悪性度および腫瘍態度の指標として細胞増殖マーカーが注目されている。高倍率の視野での核分裂像数が口腔扁平上皮癌の分化度の判定のための形態学的所見の一つである。口腔腫瘍のラベリング・インデックス由来のPCNAやKi-67を含む細胞周期抗原の免疫組織学的マーカーを用いて多くの研究が報告されている。増殖能の意義はアポトーシスへ向かう細胞の数による。増殖能とアポトーシスのバランスの不一致が腫瘍発生に関係している。p53は癌抑制遺伝子としてよく知られており, 不必要な細胞のアポトーシスを誘導することができる, 変異型p53によるアポトーシスの回避は悪性腫瘍の発生に関係している。多くの研究は口腔癌の細胞増殖とp53の過剰発現と相関があることを報告している。
本総説は扁平上皮癌の病理組織学的悪性度と超微構造的所見, 細胞増殖, アポトーシス関連遺伝子との関連について述べる。