日本口腔腫瘍学会誌
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側頸部原発と考えられた扁平上皮癌の1例
―Martinの診断基準を滿たしていると考えられた鰓原性癌について―
小沢 靖弘野間 弘康武田 栄三畑田 憲一片倉 朗橋本 貞充井上 孝
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2000 年 12 巻 1 号 p. 24-30

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抄録

患者は37歳の女性で, 右側側頸部 (胸鎖乳突筋前方) の腫瘤を主訴として来院した。CT写真で腫瘤は嚢胞様を呈しており, 試験的穿刺によって黄色・漿液性の内容液を吸引した。内容液の生化学的分析では患者の血清と比較し, GOT, LDH, CPK, アミラーゼが高値であり, また細胞診で悪性の所見は見られなかった。しかし, 術後の病理組織診で扁平上皮癌との結果を得た。われわれは転移性癌の可能性を考え, 全身の精査を行ったが, 原発腫瘍は発見されなかった。現在定期観察を行っているが, 局所の再発および原発を疑わせる腫瘍の発現は認められない。このことから, 本症例は側頸部原発の扁平上皮癌で, いわゆる鰓原性癌である可能性が示唆された。また発生機序については内容液の生化学的分析より, 異所性にリンパ節内に迷入した唾液腺組織の上皮が嚢胞化し, さらに悪性化したものである可能性も考えられた。

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