日本口腔腫瘍学会誌
Online ISSN : 1884-4995
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12 巻, 1 号
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  • 柴原 孝彦, 野間 弘康, 石川 維範, 笠原 清弘, 花上 健一, 武田 栄三, 野村 武史, 兒野 喜穂
    2000 年 12 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1988年から1998年の間に前腕皮弁による即時再建術を100症例に対して行った。口腔再建に使用した前腕皮弁について, 知覚回復, 組織学的変化, 咀嚼・会話機能を測定し長期的に判定することを目的とした。知覚機能検査では移植60カ月以降で回復傾向が見られた。前腕皮弁から採取した移植組織の形態的変化は移植後1か月から75か月まで観察が行われた。前腕皮弁の経時的変化から, 移植10カ月後より粘膜様の形態的変化を示した。アンケート調査を用いて, 構音・咀嚼機能を判定した。会話機能は殆どの患者に満足のいく回復が得られ, 術後の経過時間に併せて回復も見られた。前腕皮弁の応用は形態的のみならず機能面においても優れた皮弁であると考えられた。
  • 木村 泰男, 伊藤 善之, 不破 信和, 有地 榮一郎
    2000 年 12 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1989年以降, 臨床的に頸部リンパ節転移のない舌癌患者に対して実施している頸部予防照射の有用性を検討した。
    対象は1966年から1996年にかけて愛知県がんセンター放射線治療部において舌扁平上皮癌と診断をうけ加療されたT2NO症例142名中, 初回治療で原発巣が制御された136名である。頸部への予防照射を施行していない1988年までの102名と, 50Gyの頸部照射を施行した1989年以降の34名にわけ比較した。その結果, 照射非施行群において27.5%であった後発頸部リンパ節転移の発生は照射施行群では5.9%へと有意 (p<0.01) に減少していた。5年の現病生存率も79%から97%へと改善傾向を示したが統計学的な有意差は認めなかった。また照射によると思われる晩発障害の増加はみられず, 予防照射が頸部後発転移の防止に有効な手段であると考えられた。
  • ―周術期管理およびUFT血中動態の検討―
    柳本 惣市, 川崎 五郎, 松尾 長光, 水野 明夫
    2000 年 12 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    維持透析患者に生じた下顎歯肉癌に対して, 多量出血を伴う長時間手術を行う機会を得たので, 術前・術中・術後管理を中心に報告した。患者は60歳男性で, 約5年前より慢性腎不全のため, 血液透析を週3回受けていた。放射線療法および化学療法 (UFT300mg/日) を行い, 全身麻酔下に右側下顎骨半側切除術および右全頸部郭清術を施行した。UFTは透析性を有しており, 維持透析患者においても安全に使用できるものであった。術前, 貧血の補正のために輸血を行った。術後, 過剰輸液が考えられたため, 透析時の至適除水量を変更し, 除水を行った。その後, 再発や転移はみられなかったが, 術後15か月に肺合併症にて死亡した。
  • ―Martinの診断基準を滿たしていると考えられた鰓原性癌について―
    小沢 靖弘, 野間 弘康, 武田 栄三, 畑田 憲一, 片倉 朗, 橋本 貞充, 井上 孝
    2000 年 12 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    患者は37歳の女性で, 右側側頸部 (胸鎖乳突筋前方) の腫瘤を主訴として来院した。CT写真で腫瘤は嚢胞様を呈しており, 試験的穿刺によって黄色・漿液性の内容液を吸引した。内容液の生化学的分析では患者の血清と比較し, GOT, LDH, CPK, アミラーゼが高値であり, また細胞診で悪性の所見は見られなかった。しかし, 術後の病理組織診で扁平上皮癌との結果を得た。われわれは転移性癌の可能性を考え, 全身の精査を行ったが, 原発腫瘍は発見されなかった。現在定期観察を行っているが, 局所の再発および原発を疑わせる腫瘍の発現は認められない。このことから, 本症例は側頸部原発の扁平上皮癌で, いわゆる鰓原性癌である可能性が示唆された。また発生機序については内容液の生化学的分析より, 異所性にリンパ節内に迷入した唾液腺組織の上皮が嚢胞化し, さらに悪性化したものである可能性も考えられた。
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