日本口腔腫瘍学会誌
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インフォームドコンセントに苦慮した18歳若年者舌癌の1例
金山 景錫服部 浩朋鶴迫 伸一家森 正志瀬上 夏樹
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キーワード: 若年者舌癌, 外科療法, 告知
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2000 年 12 巻 4 号 p. 332-336

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抄録
20歳未満の舌癌患者はまれであることことから, どの治療法を選択するかについての統一した見解が得られていないのが実情であり, その選択に際しても術後の機能障害などの配慮が必要である。また若年者であることから病名の告知やインフォームドコンセントなど, 家族の協力が必要となってくる。今回, 18歳男子高校生の若年者舌癌の症例を経験したのでその概要を報告する。
症例は18歳男子高校生, 1998年3月14日右側舌縁部接触痛を主訴に当科受診。右側舌縁部に境界明瞭で表面不整な硬結を伴った15×10mmの腫瘤・潰瘍性病変を認めた。初診時に生検を施行し, 中分化型扁平上皮癌 (TINOMO) の診断を得た。若年者であることから治療後の機能障害を考慮し, かつ根治的治療を目的に外科療法 (右側舌部分切除術) と術前・術後化学療法 (シスプラチン, ペプロマイシン) を1クール施行した。術後化学療法による軽度の副作用を一過性に認めたが, 局所は舌尖が保存できたことから著明な舌の機能障害は認めなかったため経過観察となった。約1年後, 頚部リンパ節転移を認めたために右側全頚部郭清術を施行した。術後17か月, 全身・局所ともに良好で経過観察中である。なお, 若年者であり, また両親の希望もあって告知をせずにいたが, 加療期間が長期に渡るにつれて病態とそれに対する治療への相違に困惑し, 精神的に不安定になった。告知せずに加療を続けて行けるように努めたが, 患者本人の治療への理解を得られず, 加療途中に両親から本人へ癌告知をせざるを得なくなるという不測の事態が生じ, あらためて若年者癌での病名の告知やインフォームドコンセントの難しさを痛感した。
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