分子生物学の分野で遺伝子導入法として用いられる高電圧パルス波を応用した腎細胞癌の治療法について検討した。
ヌードマウス移植腎癌腫瘍を対象として, BLM, 5-FU, MMC, VBL, CDDPを用い, 各薬剤のLD
50の1/10量を腹腔内に接種30分後, 電極を腫瘍の両脇に刺入し, 1000V/cm, 100μsec, 8パルスを負荷し, 腫瘍サイズを2日おきに計測し, その効果を観察した。その結果, 電圧負荷のみ, BLM投与のみでは, コントロールと差はなく, 腫瘍の増殖が観察されたが, BLM投与電圧負荷群では, 施行4日目に腫瘍が消失し, 明らかな腫瘍の増殖抑制, 退縮が観察された。また本処置に用いる各種抗癌剤を比較すると, 5-FU, MMC投与群ではコントロール群と差は認められず, 腫瘍の増殖が観察され, BLM投与群のみにおいて腫瘍の増殖抑制, 退縮が認められた。この処置による組織学的変化を観察したところ, 本処置2日後には核の濃縮, 核の崩壊が認められ, 細胞の壊死性変化が観察された。さらに, 4日後には核の融解により, 染色される核数の減少と, 細胞質融解が観察され, 明らかな組織の壊死が認められた。
以上の結果より, ヌードマウス移植腎腫瘍に於いて, これまで抗腫瘍効果が認められなかったブレオマイシンでも, 高圧パルス負荷の併用により, 抗腫瘍効果が認められ, 新しい癌治療法として本法の有用性が示唆された。
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