日本口腔腫瘍学会誌
Online ISSN : 1884-4995
Print ISSN : 0915-5988
ISSN-L : 0915-5988
口腔・中咽頭癌手術の機能評価
道 健一
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 13 巻 3 号 p. 59-73

詳細
抄録

近年, 口腔・中咽頭癌手術後の組織欠損を補填するための種々の再建手術術式が開発されているが, それらの術式の機能評価を客観的に行った研究は少ない。これまでの知見から口腔癌術後の機能評価の方法と機能評価の観点からの術後成績をまとめると以下の通りである。
1.口腔癌術後の機能評価として言語機能の評価には口腔鼻腔遮断機能の臨床総合評価, 単音節発語明瞭度検査, 会話明瞭度検査が適切であり, 摂食機能の評価にはアンケート調査法, 発色ガム法, 水飲み検査が有用である。
2.上顎切除症例で通常は顎補綴で機能障害が改善される。顎補綴によって機能が改善されない場合には, 補綴的発音補助装置の併用, 義歯の調整あるいはインプラント治療が適応となる。再建症例と補綴症例とでは機能障害の程度では大差はないが, 障害の性質が異なる。
3.軟口蓋, 咽頭側壁切除症例では前腕皮弁などの柔軟な皮弁による再建と補綴的発音補助装置の併用が有効である。咽頭側壁の組織欠損が大きい場合には厚みのある腹直筋皮弁が適応になるが, 機能評価の点では皮弁による差はない。
嚥下障害が必発するので適切な評価法を組合せた診断結果に基づいた訓練を術前から行う必要がある。
4.舌・口底切除症例の機能予後は切除範囲, 切除部位によって異なる。前方型切除は再建を行っても著しい機能障害が残存しやすい。側方型切除では舌半側切除までの切除範囲では前腕皮弁などの柔軟な皮弁によって良好な機能が得られるが, 舌亜全摘以上の切除では腹直筋皮弁などの厚みのある皮弁の適用が適切である。舌半側切除以上の切除症例では嚥下障害が必発するので術前からの嚥下訓練が必要である。
5.下顎, 頬粘膜切除例などでは一般に術後の機能障害は軽度である。下顎切除症例では咀嚼障害が顕著であるが顎骨再建後のインプラント治療が有効である。

著者関連情報
© 日本口腔腫瘍学会
次の記事
feedback
Top