日本口腔腫瘍学会誌
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超音波断層撮影法によるN0舌癌症例の後発頸部リンパ節転移の予測
―原発巣の厚みを考慮して―
林 孝文新垣 晋星名 秀行
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2001 年 13 巻 Suppliment 号 p. 257-260

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抄録

目的: 舌癌の後発頸部リンパ節転移を予測するために, 原発巣の厚みを考慮に加えて超音波断層撮影法 (US) の診断精度をretrospectiveに検討した。
対象: 1994年12月から2000年2月までの間に頸部USを施行し, 初回に転移所見の認められなかった舌癌30例。
原発巣の厚みは口腔内探触子により計測し, 適応困難な場合は造影CTにより評価した。頸部US診断は頸部郭清症例では郭清術直前の検査を, 非郭清症例では直近の検査をもって最終判定とした。転移の有無の確定は, 郭清症例では病理組織学的診断に基づき, 非郭清症例では原発巣治療後2年以上の経過観察で転移リンパ節が出現しなかった場合に転移無しと判断した。
結果: 30症例の内訳は, 郭清症例15例 (転移有り10例・転移無し5例) ・非郭清症例15例 (すべて転移無しと判断) であった。これに対する頸部USの最終判定の診断精度は感度90%・特異度95%・正診率93%であった。一方, 原発巣の厚みが1.0cmを越える場合に潜在的リンパ節転移有りとすると, 潜在的転移の予測における診断精度は感度70%・特異度85%・正診率80%であった。
結論: 原発巣の厚みが1.0cmを越える場合に潜在的転移有りと予測するのが妥当と思われた。しかしUSによる定期的な経過観察が確実であれば, 後発転移を早期に発見でき最終的な診断精度はこれを上回るため, 予防的処置の適応は患者の環境やQOLを考慮して総合的に判断すべきであろう。

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