抄録
左側上唇皮膚混合腫瘍の68歳男性の症例を報告した。腫瘍は上唇左側下中央部に小硬結として発症, 4か月で小膨隆に進展し, 大きさは約10×10×7mm, エコー検査などで境界明瞭, 良性の腺系腫瘍と臨床診断した。そこで試験切除なしに一期的に腫瘍全切除, 欠損皮膚部を含めて修復再建が必要との方針を立てた。同腫瘍一形成外科的手術が, 2002年03月15日に入院, 同日局麻下に行われた。左側上唇vermilion border上方に径約12mmの皮切と共に腫瘍全摘, 深さ約10mm, 右上方に形成のために弧状切開を加え, 組織一部切除及び皮膚と筋層の移動を伴って, 左右バランスを取りつつ口唇形成を実施した。摘出物の組織学的診断は, 皮膚付属組織関連の良性混合性腫瘍 (軟骨様汗管腫) , 周囲に腫瘍組織残留なし。更にその組織所見は, 唾液腺原発の多形性腺腫と強く類似していた。経過は順調, 術後13か月余の現在, 形態的, 機能的に問題なく患者も満足している。