抄録
顎口腔領域扁平上皮癌進展例10例に対するOK-432の腫瘍内投与と臨床経過に伴うSCC抗原値の変動ならびに末梢血好中球O-2産生能に及ぼす影響について検索し, 以下の結果を得た。臨床的に有効症例は4例, 無効症例は6例であった。放射線療法, 開洞・腫瘍減量術とともに, OK-432の大量局注を施行した上顎洞癌のStage III症例は, これにより洞内の腫瘍組織が迅速に壊死融解を生じ, retrospectiveにみれば有効であった。この患者は7年5か月生存中である。しかし, 上記症例を除く領域リンパ節あるいは遠隔転移を生じた進展例に対するOK-432の局注は効果的ではなかった。また, 悪液質のすすんだ症例にはOK-432は有効な反応がみられず, これらの症例ではOK-432によって末梢血好中球のO-2産生能は抑制されたままで, 上昇傾向はみられなかった。OK-432の局注の副作用としては, すべての患者に悪感戦慄を伴う熱発 (38~39℃) を生じさせた。また食思不振が10例中8例に, 全身倦怠感が2例に, 頭重感, 見当識の低下がそれぞれ1例に認められた。