抄録
口腔扁平上皮癌の皮膚浸潤例に対し, 皮膚切除を含む根治手術を行い, 組織学的に皮膚浸潤が確認された14症例について臨床的検討を行った。皮膚浸潤例の原発部位はさまざまであったが, 皮膚への浸潤・転移部位は全症例が原発・再発巣および頸部転移リンパ節を被覆する皮膚であった。
14例中7例に再発がみられ, この7例中5例は衛星病巣を伴った再発で, これらは原発巣制御不能により全例死亡した。この衛星病巣はリンパ行性の逆行性転移により生じると考えられた。手術と併用した放射線療法および化学療法の衛星病巣制御に対する有効性は不明であった。3年および5年累積生存率はそれぞれ64.3%, 35.7%であった。今回の検討より, 口腔扁平上皮癌の皮膚浸潤例においては, 衛星病巣が生じる前にできるだけ早期に手術を行うのが最善の方法であると思われた。