抄録
大唾液腺腫瘍の穿刺吸引細胞診 (以下FNACと略す) に関する検討を行った。
対象は術前にFNACを行った70例で, Papanicolaou分類変法に準じ診断した細胞診と手術標本の病理組織学的診断との比較検討を行った。組織学的には21例が悪性腫瘍, 49例が良性腫瘍であった。
悪性腫瘍に関する診断成績は, 悪性腫瘍において悪性と診断された率, すなわち有病正診率 (sensitivity) は87.5%, 良性腫瘍において良性と診断された率, すなわち無病正診率 (specificity) は97.7%であり, 全体の正診率 (accuracy) は94.9%であった。
47例においてFNACによる推定組織型診断を施行し, その診断成績は悪性腫瘍で60%, 良性腫瘍で100%であった。
穿刺による特記すべき合併症は認められなかった。
以上の結果から大唾液腺腫瘍の術前検査においてFNACは安全で有用と考えられた。