抄録
症例は84歳女性で, 左側下顎臼歯部の腫瘤および接触痛を主訴に受診した。病理組織学的診断は中等度分化型扁平上皮癌であった。高齢者であることおよび家族の在宅治療希望のため, UFT単独投与を行ったところ, 腫瘤は徐々に消失し, 投与開始4カ月後には臨床的にも組織学的にも腫瘍の消失がみられたUFT投与開始から6カ月後, 造血機能障害のため投与を中止したが, さらに1年1カ月後まで再発がなく, 経過良好である。本報告例は, 癌の化学療法の効果判定基準でcomplete response (CR) に相当し, 高齢者歯肉癌におけるUFTの有用性を示す症例と考えられた。