抄録
72歳, 女性の下唇腺に発生した腺房細胞癌の稀有なる1症例を経験したので報告する。
左側下唇粘膜部に60×40×40mmの有茎性の腫瘤を認めた。最近, 腫瘤からの出血や気道狭窄による呼吸障害を来すようになり, 精査および処置を希望し来院した。
術前生検およびCT所見により悪性腫瘍ならびに所属リンパ節転移が疑われ, 左全頸部郭清術を含めた一次拡大手術ならびにEstlander's皮弁による即時再建術を行った。切除物の病理組織学的検索において, 腺房細胞癌ならびに顎下・オトガイ下リンパ節転移と確定診断した。電顕所見では介在部導管細胞類似の細胞が確認され, 腫瘍細胞は介在部導管細胞に由来したものと考えられた。
術後4年3か月間再発もなく経過は良好で, 機能的にも支障もなく, 経過観察中である。