抄録
1982年1月から1993年12月までの間に当科を受診した口腔扁平上皮癌患者のなかで, 頸部郭清術を施行し, 組織学的にリンパ節転移が陽性で, 原発巣再発の無い42例を対象とし頸部転移様式と患者の予後との関係について検討した。
結果は以下の通りであった:
1.転移リンパ節が中内深頸部より上方の1領域に存在した症例, 転移陽性リンパ節が3個以下でなおかつ節外浸潤リンパ節が多くても1個以下の症例および術前に化学療法や放射線治療が行われた場合, リンパ節の組織学的治療効果が大星・下里のGrade II b~IVの症例は他の症例に比較し予後が良好であった。
2.検討対象とした42例の転帰は, 頸部再発死が11例, 遠隔転移死が7例および無病生存が24例であった。
3.頸部再発部位では患側の上内深頸部や副咽頭間隙, 対側の頸部が多かった。
4.遠隔転移例は, 転移陽性リンパ節数が4個以上の症例に多かった。
以上の結果より, 今後は症例により副咽頭間隙や反対側の郭清も行っていく必要があると思われた。また, 転移リンパ節数が4個以上, あるいは複数の節外浸潤リンパ節を有する症例では, 何らかの補助療法が必要であると思われた。