抄録
プロスタグランジンD2 (dPGJ2) は, PGD2のアデニルシクラーゼ共役受容体を介して作用する.以前われわれは, DP受容体アゴニストであるBW245Cがマクロファージの走化性, 貪食能, スーパーオキサイド産生能, 亜硝酸産生能を抑制し, TNF-αの産生を増強するということを明らかにした.そこで今回は, マクロファージによるLPS誘導性TNF-α産生を増強させるDP受容体アゴニストのメカニズムについて検討するために, DP受容体によって増強するTNF-α産生の下流エフェクターについて解析を行った.p38 mitogen-activated protein kinase (MAPK) inhibitorであるSB203580および, extracellular signa1-relatad kinase (ERK) 1/2 inhibitorであるPD98059は, いずれもLPS存在下で, LPS誘導性TNF-α産生およびBW245CによるTNF-α産生増強を抑制した.これに対し, phosphoinositide 3-kinase (PI3K) inhibitorであるLY294002, phospholipase C (PLC) inhibitorであるD609およびPLDinhibitorであるスラミンは, いずれもLPS誘導性TNF-α産生に影響を与えなかったが, LPS存在下においては, BW245CによるTNF-α産生増強を有意に抑制した.以上の結果より, LPSはp38MAPKおよびERK1/2経路を介してTNF-α産生を誘導し, BW245CはPI3K, PLCおよびPLDを介してLPS誘導性TNF-α産生をさらに促進すると言うことが明らかとなった.