抄録
醤油は日本を代表する発酵調味料の一つであるが,これまで醤油中の小麦アレルゲンの残存性について全く研究が行われていなかった.そこで我々は,醤油醸造工程中の小麦アレルゲンの分解機構を調べるために,小麦アレルギー患者の血清を用いた3種類の免疫学的検査手法により醸造中の小麦アレルゲンを測定した.その結果,製麹中に麹(こうじ)菌が生産する酵素により小麦アレルゲンは分解を受け,さらに諸味(もろみ)中でも経時的に分解されて,生揚(きあげ)や火入れ醤油では小麦アレルゲンは完全に消失していることが明らかとなった.また,10種類の市販醤油(淡口,濃口,再仕込み,白)から小麦アレルゲンは検出されなかった.