抄録
乳児栄養法とアレルギー疾患発症との関連を明らかにするために,母乳栄養に焦点をしぼり,アレルギー疾患発症頻度や発症機序について検討した.
生後6ヶ月時の保護者アンケートによる疫学調査の結果,完全母乳栄養であってもアレルギー疾患を発症している症例を認めた.
母乳中のサイトカインや食物抗原について検討した.母乳中には TGF-β1,2 が高濃度に存在していた.母乳中に,卵白アルブミン,カゼイン,グリアジンなどの食物抗原が検出された.母乳中のサイトカインや食物抗原が児の抗原感作や免疫寛容誘導に関わっている可能性が示唆された.また,完全母乳栄養であるにも関わらず乳児期にアレルギー疾患を発症する症例では,母乳中の一部の蛋白が内因性にアレルゲンとして作用している可能性が示唆された.