日本小児アレルギー学会誌
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原著
下部消化管内視鏡検査で好酸球性直腸炎と診断し食物過敏性直腸炎が疑われた一例
尾形 善康在津 正文山本 修一室 英理子西 奈津子下田 良徳永 藏濱崎 雄平
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ジャーナル 認証あり

2010 年 24 巻 1 号 p. 135-142

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抄録
食物過敏性直腸炎は全身状態が比較的良好で体重減少などを認めない乳幼児期早期の血便では考慮すべき疾患である.診断のgold standardは原因食物抗原の除去負荷試験であるが,日常診療における診断は,腸管感染症や裂肛などの除外に加えて,原因と推定される食物抗原の除去により症状が改善する事で経験的になされる事も多い.しかし経験的診断では,過剰診断による不必要な食物制限や代替ミルク使用が懸念される.昨今,食物過敏性直腸炎の病理組織所見による診断が提唱されており,下部消化管内視鏡検査は客観的診断根拠として有用であると考えられる.今回,我々は比較的全身状態が良好な粘血便を呈する3ヶ月男児を経験した.授乳中の母親の乳製品の不十分な摂取制限で症状の改善を認めなかったが,母親は母乳中止には消極的であった為,下部消化管内視鏡による直腸粘膜病理所見より病理学的に好酸球性直腸炎と診断し,母乳中の食物抗原による食物過敏性直腸炎を疑って,母乳中止および精製アミノ酸乳による栄養への変更により症状は改善した.本症例において下部消化管内視鏡検査は安全に行えて有用であったと考えられた.
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© 2010 日本小児アレルギー学会
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