日本小児アレルギー学会誌
Online ISSN : 1882-2738
Print ISSN : 0914-2649
ISSN-L : 0914-2649
第46回日本小児アレルギー学会シンポジウム4 喘息と気道感染の接点
Hygiene hypothesisと予防・治療
榎本 雅夫島津 伸一郎
著者情報
ジャーナル 認証あり

2010 年 24 巻 1 号 p. 87-94

詳細
抄録

近年,日本を含む先進諸国における各種のアレルギー疾患の増加は著しく,発展途上国においてもその増加傾向が認められている.筆者らの耳鼻咽喉科領域の疫学調査によると,スギ花粉症でその有病率は16.2%から細菌の10年間で26.5%と大幅に増加している.増加の要因として,花粉やダニなどのアレルゲンの増加,食生活・栄養の変化,大気汚染の影響などが言われているが,興味を持たれているのは先進諸国における清潔志向,予防接種の普及,抗生物質の乱用などによる微生物への曝露機会の減少(衛生仮説;Hygiene hypothesis)である.Th2優位の免疫系を持って生まれる新生児がTh1/Th2バランスのとれた免疫系へと発達するには程度な微生物の刺激が必要で,その破綻が近年のアレルギー疾患の増加に関係しているとする考え方である.結核菌感染や腸内細菌とアレルギー発症に関する疫学調査などの成績はそれを裏付けつつあり,そのメカニズムの詳細についても検討されつつある.また,この様な観点から,各種アレルギー疾患に結核菌や腸内細菌(プロバイオティクス)投与する臨床試験も行なわれつつあり,一定の効果が得られつつある.将来,発症予防にも役立ちそうであるものの,いつ,どのような人に,どの菌種を,どの程度の量を投与するのがベストであるかは今後の臨床成績の集積に検討に委ねたい.

著者関連情報
© 2010 日本小児アレルギー学会
前の記事 次の記事
feedback
Top