日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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教育講演X
ベルリン定義からみたARDSの病態と呼吸管理
――機能的予後の改善を目指して――
田坂 定智
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2015 年 25 巻 1 号 p. 66-71

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抄録

急性呼吸不全の原因疾患は肺炎,肺血栓塞栓症,喘息発作など多様であるが,中でも急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome; ARDS)は重篤で難治性の病態として知られている.ARDSについては,2012年にベルリン定義が提唱され,①急性発症,②胸部画像上の両側性陰影,③左心不全のみで病態を説明できないこと,④低酸素血症の4項目で診断される.また陽圧換気下での低酸素血症の程度により軽症,中等症,重症に分類されるが,この重症度と予後との関連については明らかになっていない.ARDSでは,一回換気量を低く設定し,呼気終末陽圧により肺胞の虚脱・再開放を防ぐ肺保護戦略が提唱されている.また腹臥位換気や軽症例では非侵襲的陽圧換気(NPPV)の有効性が示されている.近年ARDS患者の生命予後が改善するに伴い,機能的予後が問題となっている.ARDSからの回復後も健康関連QOLは低く,運動機能や認知機能の低下もみられるため,理学療法の介入効果などについて検討が必要である.

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© 2015 一般社団法人日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
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