抄録
新型インフルエンザA(H1N1)2009は,世界各地で流行し,2009年5月以降,我が国においても流行を迎えた.複数の報告から,新型インフルエンザ重症化の危険因子として喘息を含む慢性呼吸器疾患が指摘されている.我々は当院通院中の気管支喘息患児188例を対象に,各患児の重症度・背景とあわせ,新型インフルエンザ罹患の有無,罹患時の発作の有無と入院の有無について検討した.新型インフルエンザに罹患したのは57例(30.3%)であった.新型インフルエンザ罹患者,非罹患者間で,各検討項目の差異につき検討したところ,新型インフルエンザ罹患者の年齢が高かった(p=0.02).喘息発作を認めたのは11例(対象全体の5.8%,罹患者の19.2%)で,発作を認めた児と発作を認めなかった児の重症度に差異はなかった.入院したのは2例(対象全体の1.0%,罹患者の3.5%)のみで重症者はいなかった.長期管理を行っていると重症化が抑制されることが示唆された.流行から約1年が経過したが,第2流行に備え,気管支喘息患者にはその軽重を問わず十分な管理が望まれる.