日本小児アレルギー学会誌
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25 巻, 1 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
第47回日本小児アレルギー学会会長講演
第47回日本小児アレルギー学会シンポジウム5 呼吸器系アレルギー疾患の免疫療法
  • 秋山 一男, 岡本 美孝
    2011 年25 巻1 号 p. 9
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/27
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  • 杉本 和夫, 下条 直樹, 冨板 美奈子, 河野 陽一
    2011 年25 巻1 号 p. 10-15
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/27
    ジャーナル 認証あり
    私達は過去において大多数の気管支喘息およびアレルギー性鼻炎の患者に対して高頻度に減感作療法を行なって臨床効果のあることを実感してきた.その効果発現機序が最近解明され,欧米ではアレルギー疾患の唯一の自然寛解が得られる免疫療法として広く注目を浴びている.入院加療を要するrapid hyposensitization therapyに代わって,外来治療で可能なクラスター減感作療法の登場によって治療範囲が拡大した.一方舌下免疫療法は欧米では多くの抗原に対して臨床的実績が定着した.現在,日本ではハウスダストとスギ抗原の注射用の抗原の2つが保険適応されるのみであるが,今後は多くの抗原が早急に用意され臨床応用されることを望む.
  • 大橋 淑宏
    2011 年25 巻1 号 p. 16-23
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/27
    ジャーナル 認証あり
    免疫療法によるスギ花粉症の治癒,感作個体における発症予防,感作の予防を検証した.
    5年以上の免疫療法によって無症状化し,スギ抗原刺激下でIL-5を産生しなくなった個体では,免疫療法終了3年後でも花粉飛散期に症状は出現せず,T細胞の抗原反応性も継続して抑制されている.したがって,免疫療法はスギ花粉症を治癒させうることが示唆された.また,感作成立個体に予防的にスギ免疫療法を施行することで,スギ花粉症の発症は抑制され,スギ抗原に対するT細胞の反応性も消失した.また,ダニ単独感作症例にダニ免疫療法を施行することで,スギに対する新たな感作を抑制することが可能であった.
  • 堀口 茂俊, 米倉 修二, 稲嶺 絢子, 藤村 孝志, 中山 俊憲, 岡本 美孝
    2011 年25 巻1 号 p. 24-29
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/27
    ジャーナル 認証あり
    精製アレルゲンによる免疫治療は唯一根治が期待できる治療法であるが,様々な問題点から現行の皮下注射法では施行数そのものが減ってきており,注射法の弱点を克服できると考えられる舌下免疫療法に注目が集まっている.日本独特とも言えるスギ花粉症に対しては本邦でのスギ花粉症に対する舌下免疫療法の開発が不可欠である.
    私たちはこれまでにプラセボ対照2重盲検試験(RCT)を段階的に3試験行った.この試験により安全性と一定の効果が認められた.これをもって厚生労働省から第I/II相臨床試験として認められ,私たちの方法(連日投与,2シーズン目評価)をなぞってJTトリイから第三相試験が始まっている.臨床試験段階から標準治療への展開が期待される.
第47回日本小児アレルギー学会シンポジウム6 アレルゲンとしての食品
第47回日本小児アレルギー学会シンポジウム10 アレルギー疾患の発症・増悪を修飾する因子
  • 加藤 善一郎, 河野 陽一
    2011 年25 巻1 号 p. 68
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/27
    ジャーナル 認証あり
  • 中尾 篤人
    2011 年25 巻1 号 p. 69-74
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/27
    ジャーナル 認証あり
    ヒト母乳には免疫系を調節する重要なサイトカインであるtransforming growth factor(TGF)-βが豊富に含まれているがその生物学的意義は不明である.最近の研究は,母乳中TGF-βは,腸管粘膜系が未発達な乳幼児期において経口的に摂取されるタンパク質に対する過剰な免疫反応(アレルギー反応)を防ぐための自然の阻害因子として働いている可能性を示唆している.
  • 荒川 浩一
    2011 年25 巻1 号 p. 75-80
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/27
    ジャーナル 認証あり
    最近の出生コホート研究により気管支喘息の発症を修飾する因子として,乳幼児期の喘鳴を伴う下気道感染とアレルギー感作が相乗的に作用する可能性が示唆されている.増悪因子としても,ウイルス感染とアレルゲン曝露が相互に影響を及ぼすことが指摘されている.現在,その相互作用の機序を解明するためにGene-environmental interactionやEpigeneticsな面からの検討が盛んになされている.今後,気道上皮障害をもたらすウイルス,特にライノウイルスの気道からの排除機構を解明することにより喘息発症および増悪を回避できる可能性があり,益々の研究がなされることが期待される.
  • 米倉 修二, 岡本 美孝
    2011 年25 巻1 号 p. 81-84
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/27
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    アレルギー性鼻炎を持っていることはその後の気管支喘息発症の危険因子となることが示唆され,アレルギー性鼻炎の発症予防は喘息の発症予防にも繋がる.アレルギー性鼻炎及び喘息発症には抗原特異的IgEの上昇が関連しており,改めて抗原回避の重要性が示唆された.アレルギー性鼻炎の症状には上気道感染は増悪作用を示すと考えられ,アレルギー性鼻炎患者の管理を行っていくうえで考慮すべき重要な増悪因子と考えられる.
  • 金子 英雄, 大西 秀典, 森田 秀行, 川本 美奈子, 久保田 一生, 寺本 貴英, 加藤 善一郎, 松井 永子, 山本 崇裕, 加藤 晴 ...
    2011 年25 巻1 号 p. 85-89
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/27
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    食物アレルギーの発症・増悪を修飾する因子として遺伝的要因,環境要因があげられる.母乳は,アレルギーの発症を修飾する因子の一つと考えられている.そこで,母乳中のサイトカインを測定した.生後1ヶ月の時点での母乳は生後数日の母乳と比較し,IFN-γの濃度は上昇し,TGF-β1, 2の濃度は減少する傾向を認めた.母乳中のサイトカインは,免疫寛容誘導の成立を修飾する可能性が示唆された.つぎに,治療への展開として牛乳の主要アレルゲンであるβ-ラクトグロブリン(BLG)を酵素で分解し,B細胞エピトープを消失させ,T細胞エピトープは保持したBLGを作製した.牛乳アレルギー患者に,投与したところ一部の牛乳アレルギー患者では,寛容誘導が促進される可能性が示唆された.現在,他の牛乳アレルゲンの分解物の作製を行うとともに,少量減感作療法との比較も含めて,効率的かつ安全な経口減感作療法の確立にむけて検討をすすめている.
原著
  • 井上 直之, 山本 明日香, 松本 居子, 石垣 信男
    2011 年25 巻1 号 p. 90-97
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/27
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    缶詰の黄桃を摂取したのちに運動で誘発された食物依存性運動誘発アナフィラキシーの1例を経験した.負荷試験のための原因食物検索を行ったが,モモ特異的IgE抗体は陰性で,モモの診断用スクラッチエキスが製造されていなかった.そのため,缶詰の黄桃でprick-prick testを施行したところ陽性でありこの検査法は有用であった.食物依存性運動誘発アナフィラキシーは負荷試験の陽性率が低いため負荷項目の決定が重要である.その項目の決定にprick-prick testが有用であるか否か,1983-2009までの小麦を除く食物依存性運動誘発アナフィラキシーの文献的考察を行った.prick-prick test単独での陽性率は特異的IgE抗体,皮膚プリックテストに比べ低かった.しかし,特異的IgE抗体に加えprick-prick testを加える事で陽性例が増加し,負荷試験項目の決定に有用である可能性が示唆された.
  • 王 茂治, 西庄 佐恵, 田口 智英, 木村 光明
    2011 年25 巻1 号 p. 98-103
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/27
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    メトヘモグロビン血症を合併した消化管アレルギーの1ヶ月男児を経験した.初診時,患児は,発熱,嘔吐,下痢,発育障害,顔色不良,チアノーゼなどの症状を呈し,血液検査ではCRP上昇に加え,32.4%と著明なメトヘモグロビンの増加が認められた.メトヘモグロビン血症を含め全ての症状・所見は育児用牛乳調製粉乳(普通ミルク)を中止することで改善した.治療の目的で大豆乳を与えたところ症状が再発したが,アミノ酸調整乳では症状の再発はみられなかった.アレルゲン特異的リンパ球刺激試験では,牛乳蛋白(κ-カゼイン)に陽性反応がみられた.生後2ヶ月時に普通ミルクで負荷試験を実施したところ,発熱,嘔吐,下痢とともにメトヘモグロビン血症が再現した.メトヘモグロビン血症は稀な合併症であるが致命的な経過をとることもあるので,顔色不良の難治性下痢患者を診療する際には十分に注意を払う必要がある.
短報
  • 正田 哲雄, 磯崎 淳, 三村 尚, 小川 倫史, 野間 剛, 中村 陽一, 川野 豊
    2011 年25 巻1 号 p. 104-107
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/27
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    新型インフルエンザA(H1N1)2009は,世界各地で流行し,2009年5月以降,我が国においても流行を迎えた.複数の報告から,新型インフルエンザ重症化の危険因子として喘息を含む慢性呼吸器疾患が指摘されている.我々は当院通院中の気管支喘息患児188例を対象に,各患児の重症度・背景とあわせ,新型インフルエンザ罹患の有無,罹患時の発作の有無と入院の有無について検討した.新型インフルエンザに罹患したのは57例(30.3%)であった.新型インフルエンザ罹患者,非罹患者間で,各検討項目の差異につき検討したところ,新型インフルエンザ罹患者の年齢が高かった(p=0.02).喘息発作を認めたのは11例(対象全体の5.8%,罹患者の19.2%)で,発作を認めた児と発作を認めなかった児の重症度に差異はなかった.入院したのは2例(対象全体の1.0%,罹患者の3.5%)のみで重症者はいなかった.長期管理を行っていると重症化が抑制されることが示唆された.流行から約1年が経過したが,第2流行に備え,気管支喘息患者にはその軽重を問わず十分な管理が望まれる.
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