抄録
RSウイルスが乳幼児の細気管支炎や肺炎の原因となることはよく知られているが,重症のRSウイルス感染症の罹患後に,反復性喘鳴または喘息が発症する可能性も指摘されている.これまでにRSウイルスによる2つの影響,すなわち,直接的な気道障害による喘息の発症の可能性と,間接的な影響として免疫学的な側面からの喘息の発症の可能性が指摘されている.すなわち,前者ではRSウイルスの感染を受けた気道上皮細胞から,炎症性のサイトカイン/ケモカインが産生され,結果として,乳幼児の未熟な気道にリモデリングを含む気道障害を残存させる可能性が考えられること,後者ではRSウイルス感染が免疫システムに影響を与え,アトピーに傾けることが考えられている.小児の喘息の予防には,乳幼児期のRSウイルス感染を阻止することが重要であるが,今後,ウイルス感染後の反復性喘鳴疾患を,病態の異なる乳児喘息の亜型(phenotype)のひとつとしてとらえることに意義があると思われる.