日本小児アレルギー学会誌
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シンポジウム16 アレルギー疾患患者は症状をどのように感じているのか
喘息の重症度と症状
菊池 喜博
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2012 年 26 巻 1 号 p. 72-78

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抄録
喘息の重症度は主に呼吸困難などの症状で決められるが,症状は主観に基づくものであり個人差が大きい.特に,意識を失うほどの重篤な発作経験者(Near-fatal asthma:NFA)では呼吸困難感受性および低酸素換気反応の両者が低下しており,呼吸困難が軽いのはむしろ危険である.NFA患者50名に意識消失時の状況や意識消失直前の呼吸困難(窒息感)の有無を尋ねたところ,多くは(約70%)自宅や病院で歩行など体動を増加した直後急速に意識を消失し,70%以上では意識消失直前でも窒息感や死の恐怖感を感じていない.この結果は意識消失の原因(喘息死の原因)が重症気道狭窄による「いわゆる窒息」とする従来の考え方に疑問を呈する.マウスのモデル実験では,低酸素に対する反応が低いマウス程,低酸素により容易に呼吸が停止するとの結果が得られており,重症低酸素血症が意識消失や喘息死の原因であり,その誘因としてNFA患者で呼吸困難感症状および低酸素換気反応が低下していることが関係している.
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© 2012 日本小児アレルギー学会
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