日本小児アレルギー学会誌
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原著
下肢X線像にて著明な異常がみられなかった魚肉制限に伴うビタミンD欠乏性くる病の1例
櫻井 嘉彦高塚 英雄佃 宗紀
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2012 年 26 巻 4 号 p. 622-628

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抄録
1歳7か月の男児.栄養不良を伴うくる病を疑われ当科へ紹介された.4か月時に近医皮膚科で食物アレルギーと診断され,母の食事から卵,牛乳および小麦を除去していた.児についても離乳食開始後これらの食品を除去していたが,1歳頃から魚肉摂取後に蕁麻疹がみられるようになり,さらに特異的IgE抗体が確認されたため,魚肉も制限された.当科初診時の下肢単純X線写真では明らかなくる病性の変化を認めず,血清カルシウムおよびリン値は基準値内であったが,ALPおよびPTHの高値を認めた.1歳8か月時に突然,走能力が低下し,25(OH)Dの低値も明らかになったためビタミンD欠乏性くる病と診断した.児の日光浴時間は確保されていたが食物制限は魚肉にも及んでおり,ビタミンD欠乏は母乳栄養を背景とした食物制限によるものと思われた.乳幼児において,魚肉はビタミンDの主要供給源であり,食物アレルギーによる魚肉制限を行う場合にはビタミンD欠乏およびくる病の発症に留意する必要が示唆された.
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© 2012 日本小児アレルギー学会
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