日本小児アレルギー学会誌
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原著
末梢気道評価を補足した呼気中一酸化窒素濃度ゾーン解釈の有用性の検討
西田 光宏矢島 周平桑子 実由樹坂井 聡黒田 喜代子宮城 佳史宮本 健吉原 重美
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2014 年 28 巻 5 号 p. 787-795

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抄録
米国胸部学会(ATS)は2011年に,呼気NOを低値群と中間値群と高値群のゾーンに分類した呼気NO解釈のガイドラインを発表した.しかし,その背景や有用性は明らかでない.本研究は,吸入ステロイド薬(ICS)で治療中の症状が安定した12歳以上の喘息児を,%V50を補足したATSゾーンに分類し,各ゾーンの症例の特徴を解析した.その結果,以下の知見を得た.1:呼気NOと総IgEやダニ特異的IgE,および呼気NOと%V50などの末梢気道指標との相関が確認された.2:呼気NO低値群は,肺機能は良好でダニ感作が軽度な,治療のステップダウンを考慮できる喘息症例が多いが,一部は非好酸球性喘息の混在が推定された.3:呼気NO中間値群は,低値群より総IgEとダニ特異的IgEクラスが高い症例が多く,アドヒアランスと吸入手技の確認が必要と考えた.4:呼気NO高値群は,総IgEとダニ特異的IgEクラスが高く,かつ末梢気道狭窄を認める症例が多く,アドヒアランスと吸入手技の確認に加えて,運動誘発喘息など見逃しやすい軽微な喘息症状を含めた喘息コントロール状態の再評価が必要と考えた.5:末梢気道評価を補足したATSゾーン分類は,ICSの減量やアドヒアランスの確認が適当な症例の選別だけでなく,非好酸球性喘息が推定される症例の検出にも有用であり,喘息症例の特徴を把握して適正な治療方針を決定するために有用な補助手段の一つと考えた.
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© 2014 日本小児アレルギー学会
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